バスケットボールでは、ドリブルが上手い選手、シュートが入る選手が注目されがちです。
もちろん、個人の技術は大切です。
しかし、練習では上手にプレーできるのに、試合になると思うように活躍できない選手もいます。
その違いを生む要素の一つが、**状況を見て、自分でプレーを選択する力、つまり「判断力」**です。
今回は、水野慎士さん・鈴木良和さんの著書『育成年代のプレーヤーの判断力を伸ばす バスケットボールトレーニング』をきっかけに、育成年代の選手に必要な判断力と、その鍛え方について考えてみます。
※本記事の練習例は、テーマを実践に落とし込むために独自に整理したものです。
1.技術があることと、試合で使えることは違う
例えば、ドリブルが得意な選手がいるとします。
相手がいない状況なら、速くドリブルできます。コーンを使った練習でも、スムーズに相手を抜くことができます。
ところが、試合ではどうでしょうか。
目の前にはディフェンスがいる。味方も動いている。ゴールまでのスペースも刻々と変わる。
この状況で必要になるのは、ドリブルの技術だけではありません。
* 相手との距離はどれくらいか
* ディフェンスはどちらを守ろうとしているか
* 自分が攻められるスペースはあるか
* 味方がフリーになっていないか
* 今は攻めるべきか、それともパスを出すべきか
こうした情報を集め、自分のプレーを決める必要があります。
つまり、技術を身につけることと、技術を使う場面を判断できることは別の課題なのです。
ドリブルの練習量を増やすだけでは、試合での判断力まで十分に伸ばせない場合があります。

2.判断力を伸ばすために必要な3つの力
判断力を考えるとき、私は次の3つに分けると整理しやすいと考えています。
① 見る力
まずは、プレーを選ぶための情報を集める力です。
ボールだけを見ていると、ディフェンスの動きや味方の位置を把握できません。
例えば、ボールを受ける前にゴール方向を確認する。味方とディフェンスの位置関係を見る。相手がどちらに重心をかけているか観察する。
こうした情報が、次のプレーを選ぶための材料になります。
② 選ぶ力
状況が見えていても、選択肢がなければ適切なプレーは選べません。
ディフェンスが距離を詰めてきたら、ドライブできるかもしれません。
相手がドライブを警戒して下がったら、シュートが選択肢になります。
ヘルプディフェンスが寄ってきたら、味方へのパスが有効になることもあります。
大切なのは、一つのプレーにこだわるのではなく、相手の反応に応じて選択肢を変えることです。
③ 実行する力
良い判断ができても、実行できなければ得点やチャンスにはつながりません。
判断したプレーを実現するためには、ドリブル、パス、シュート、ストップ、身体の使い方といった技術が必要です。
だからこそ、判断力と技術は切り離して考えるものではありません。
状況を見て、プレーを選び、その判断を技術で実現する。
この一連の流れを練習することが大切です。

3.判断力を伸ばす具体的な練習方法3選
ここからは、普段の練習に取り入れやすい方法を紹介します。
練習① ディフェンスの反応を見てプレーを変える
【目的】相手の動きに応じて、攻め方を変える力を身につける。
【方法】
1. オフェンスとディフェンスが1対1を行う。
2. オフェンスは、あらかじめ決めた一つの動きだけで攻めない。
3. ディフェンスとの距離や反応を見て、ドライブ、シュートなどを選択する。
4. プレーが終わったら、なぜその選択をしたのか振り返る。
例えば、ディフェンスが強く前に出てきたら、その勢いを利用して抜く。
反対に、相手が距離を取っているなら、シュートを検討する。
もちろん、実際の選択は選手の技術や試合状況によって変わります。
重要なのは、指導者が正解をすべて先に教えるのではなく、選手が相手の反応を見て判断する機会をつくることです。
練習② パスを出した後の動きを考える
【目的】ボールを持っていないときにも、状況を見て判断する力を養う。
【方法】
1. 3対3などの少人数で攻撃する。
2. パスを出した選手は、その場で止まらずに次の動きを考える。
3. ディフェンスの位置や味方の動きを見て、空いたスペースへ移動する。
4. パスを受け直す、味方のドライブを助ける、スペースを空けるなど、状況に応じて選ぶ。
バスケットボールでは、ボールを持っている選手だけが攻撃しているわけではありません。
一人がドライブしたとき、味方が適切な位置へ動けば、ディフェンスは複数の選択肢に対応しなければならなくなります。
逆に、全員がボールに集まってしまえば、攻めるスペースがなくなることもあります。
ボールを持っていない時間にも、自分にできることを考える習慣をつけたいところです。
練習③ 練習後に「なぜ?」を問いかける
【目的】自分の判断を振り返り、次のプレーに生かす。
練習中にミスが起きたとき、すぐに答えを伝えていないでしょうか。
例えば、ドライブを止められた選手に対して、
「そこでパスを出せばよかった」
と伝えれば、正解を知ることはできます。
しかし、次の場面でも同じように判断できるとは限りません。
そこで、次のように問いかけてみます。
* 「ディフェンスはどこを守っていた?」
* 「ほかにどんな選択肢があった?」
* 「味方の位置はどうなっていた?」
* 「もう一度同じ場面になったら、何を変える?」
選手自身が状況を整理することで、次のプレーにつながる気づきが生まれる可能性があります。
ただし、毎回長い振り返りをする必要はありません。
一つのプレーについて、短く問いかけるだけでも十分です。

4.指導者が気をつけたいこと
判断力を伸ばすために、指導者が意識したいことがあります。
それは、ミスを減らすことだけを目的にしないことです。
選手が自分で判断すれば、当然、選択を間違えることもあります。
しかし、ミスをしたくないという気持ちが強くなりすぎると、選手は自分で考えるよりも、指導者に怒られないプレーを優先するかもしれません。
もちろん、何でも自由にやればいいというわけではありません。
チームとして大切にする原則や、状況に応じた基本的な考え方は共有する必要があります。
そのうえで、選手が判断した理由を聞き、次の選択肢を一緒に考えていく。
「そのプレーは違う」と伝えるだけでなく、「ほかには何ができたと思う?」と問いかける。
こうした関わり方が、選手自身で考える機会につながります。
5.育成年代で大切なのは、正解を覚えることだけではない
試合では、同じ状況が何度も繰り返されるとは限りません。
相手が変われば、守り方も変わります。
味方が変われば、使えるスペースや連係も変わります。
だからこそ、決められた動きを覚えるだけでは対応できない場面が出てきます。
もちろん、基礎技術やチームの約束事は重要です。
その土台のうえで、状況を見て、自分で考え、プレーを選択できるようになることが大切だと思います。
指導者がすべての答えを用意するのではなく、選手が自分で答えを探す機会をつくる。
そして、判断に必要な技術を身につけられるように練習を組み立てる。
この両方が、試合で力を発揮できる選手を育てることにつながるのではないでしょうか。

まとめ
育成年代のバスケットボールでは、ドリブルやシュートといった技術だけでなく、その技術をいつ、どのように使うかを判断する力も大切です。
今回の内容を振り返ると、ポイントは次の3つです。
* 見る力: 相手、味方、スペースなどの情報を集める。
* 選ぶ力: 状況に応じて複数の選択肢からプレーを決める。
* 実行する力: 判断したプレーを技術で実現する。
そして、指導者にできることは、選手に正解を伝えるだけではありません。
選手が考え、判断し、振り返る機会を練習の中につくることです。
私自身も、バスケットボールの指導や学びを通して、技術だけでなく「試合の中で何を見て、どう判断するか」という視点を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
